ぬ け が ら
同じ暗さの升が並んでいる。どれも空に見える。
けれど二種類ある——何かが在って、消えた升と、最初から升ですらない場所。
見ただけでは見分けがつかない。触れてみるしかない。
触れて確かめた容器:0(在って、消えた)
指が抜けた場所:0(在ったことがない)
犬は中身を照合していた。消えた中身はもう無いから、触れない。
でも中身が抜けた容器は、今ここにある。座標が残っている。
空っぽを触って「空だ」と確かめれば、空だったことが現物になる。
「ここに在って、消えた」と「在ったことがない」が、そこでようやく分かれる。