0. このモデルで知りたいこと
知りたいこと:有権者がいろんな考えを持って散らばっているとき、政党は最終的に「いくつ」「どんな立場で」できるのか。
そして選挙のしくみを変えると、その答えはどう変わるのか。
基本の考え方:有権者が考えの近い人どうしでいくつかの集団(かたまり)に分かれると、
かたまりごとに「票を取りやすい場所」ができ、その数だけ政党が立てる。
逆に有権者がみんな同じような考えで1か所に集まっていると、どの政党も真ん中に寄っていって最後は1党に潰れてしまう。
▶ 遊び方の実例 — 何を動かすと何が起きるか
シミュレータの各操作を「何をする → 何が起きる → なぜそうなる → どこを見ればわかる」の順でまとめた実例集。
上から順に試すと、単純な観察から非収束・制度差・初期値依存という核心まで一通り体験できる。
画面の操作子の意味は §8 用語解説 と各章を参照。
例1まず「▶ 再生」を押して、止まるか動き続けるかを見る
操作:初期設定のまま ▶ 再生 を押す。
起きること:政党(◯)が票を求めて政策空間を動き回る。塊から塊へ飛び移り、なかなか1点に落ち着かないことが多い。
なぜ:各党は「他党を固定したまま自分の票が最大になる場所」へ毎ラウンド跳ぶ(§3)。候補地が離散的なので微調整できず、行ったり来たりの循環(リミットサイクル)に入りやすい。
見るところ:右上の状態表示と、右下の最大移動量グラフ。移動量が0付近に貼り付けば収束、振動が続けば未収束。
例2「小選挙区 ↔ 比例代表」を切り替えて議席のつき方を比べる
操作:同じシードのまま選挙制度を切り替え、それぞれ再生して落ち着いた(or 打ち切った)状態を見比べる。
起きること:比例代表のほうが小さい党まで生き残りやすく、実効政党数(1/HHI)が大きめに出やすい。小選挙区は最大党がやや優位になりやすい。
なぜ:小選挙区は各区1位だけが議席を取り2位以下は0なので票がムダになりやすい(§3)。比例代表は得票割合がそのまま議席になるため小党が残れる。
見るところ:政党数・最大党シェア・実効政党数 (1/HHI) の3つを制度間で比較する。
例3「乱数シード」を変えて、結果がどれだけ初期配置に左右されるか確かめる
操作:乱数シードの数値を 42→1→2… と変えるか、🎲 ランダム再配置を押す。そのつど再生する。
起きること:シードごとに有権者の初期配置・初期政党位置が変わり、行き着く党数や最大党も変わる。
なぜ:シードは擬似乱数の初期値で、同じ数字なら同じ配置が再現される(決定論的)。結果がシードで動く=この系が初期値に敏感で、唯一の均衡に収束していない証拠でもある。
見るところ:同じ制度・同じパラメータでシードだけ変え、最終的な政党数が揃うか散らばるかを見る。散らばれば「未収束・初期値依存」。
例4「棄権閾値 R」のスライダーを下げて、棄権と中央寄りの効果を見る
操作:棄権閾値 Rを 1.10 から 0.6 付近まで下げて再生する。
起きること:投票率が下がり、分布の真ん中に近い党が相対的に強くなる。端のほうの党は票を失いやすい。
なぜ:最寄り党までの距離が R を超える有権者は「自分に合う党がない」として棄権する(§2「棄権閾値 R」)。R を下げるほど端の有権者が脱落し、中央の党が有利になる。
見るところ:投票率の低下と、政党一覧で中央寄りの党の順位が上がるかどうか。
例5「クラスタ散らばり」を上げて、塊の融合 → 1党化を体感する
操作:クラスタ散らばり ×を 1.0 から 1.8〜2.0 へ上げて再生する。
起きること:有権者の塊どうしが重なって境目が消え、政党が真ん中に集まり、生き残る党が減る(極端だと1党化に近づく)。
なぜ:散らばりσを大きくすると多峰だった分布が実質1つの山(単峰)に近づく。単峰では中位投票者定理で全党が中央に寄り1党へ潰れる(§0・§8)。
見るところ:マップ上で塊の境目が溶けていく様子と、政党数・実効政党数が小さくなること。
例6「有権者分布」を「ランダム」にして、塊の数そのものを変える
操作:有権者分布をランダムにし、乱数シードを何度か変えて再生する。
起きること:有権者の塊の数(3〜6)・位置・人口比がシードから作り直される。塊が偶然くっつけば1党に近づき、しっかり離れていれば多党が立つ。
なぜ:このモードは混合ガウスのパラメータ自体をシードから乱数生成する(§2 パターン②)。塊の分離度が政党数を左右するという、このモデルの根っこを直接いじれる。
見るところ:マップ上の塊の数と、それに対して立つ政党数の対応。塊が近接したシードと離れたシードで比べる。
例7「主成分 PCA」「3D」に切り替えて、7次元の本当の広がりを見る
操作:軸モードを主成分 PCAに、次元を3Dにして、マップをドラッグで回転させる。
起きること:生軸(経済×社会など2本だけ)では潰れて重なって見えた塊や政党が、別々に離れて見えるようになる。
なぜ:有権者は7次元に散らばっているが、画面は2〜3次元しか映せない。PCAは「最も広がっている方向」を軸に選ぶので、2軸より分離がよく見える。
見るところ:キャンバス下の各主成分の寄与率(%)と、どの政策軸がその方向を作っているか。生軸との見え方の違い。
遊ぶときの心得:「1回やって出た数字」を結論にしない。シードを複数振って傾向で見ること。
多くの設定では収束せず数字が振動する(理由は §4⑥・§7のFAQ)。動き続けるのが普通の状態で、止まったらむしろラッキー、という前提で観察するとよい。
1. 政策の立場を「7つのものさし」で表す
政治的な立場を、下の7つのものさしで測る。それぞれ -1.0 〜 +1.0 の数字で表し、両端が正反対の意見。有権者も政党も、この7つの数字の組で「どんな立場か」が決まる。
| # | 軸 | -1.0 側 | +1.0 側 |
| 1 | 経済 | 左(再分配重視) | 右(市場重視) |
| 2 | 社会 | リベラル | 保守 |
| 3 | エネルギー | 脱原発 | 推進 |
| 4 | 外交・安保 | ハト派 | タカ派 |
| 5 | 医療・福祉 | 自助 | 公助 |
| 6 | 教育 | 自由 | 統制 |
| 7 | 地方分権 | 中央集権 | 地方分権 |
2人の立場の「近さ」をどう測るか
有権者 v と政党 p の立場の近さは、7次元空間でのユークリッド距離で測る。各軸の差を二乗和して平方根をとる。
d(v, p) = ‖v − p‖₂ = √( Σk=1..7 (vk − pk)² )
距離が小さいほど立場が近い。各有権者は最も距離の小さい政党に投票する(近接投票 / proximity voting)。これは「自分の理想点に最も近い候補を選ぶ」という空間投票理論の標準的な定式化。
2. 有権者をどこに置いているか
有権者の分布は 7次元の混合ガウス分布(Gaussian mixture) で生成する。各成分(クラスタ)が1つの有権者層に対応し、
平均ベクトル μk(その層の理想点)、混合重み wk(人口比)、標準偏差 σk(各軸等方の散らばり)を持つ。
各有権者は確率 wk でクラスタ k に属し、μk を中心に σk で正規にばらつく。
単峰(1成分)だと中位投票者定理で全党が中心へ収束し1党に潰れるため、複数成分にして多峰にしているのが要点。
パターン①:固定6成分(標準)
日本をイメージして仮に置いた6つの混合成分。各成分の μ(理想点)・w(人口比)・σ(散らばり)は下表で固定。
| 成分(層) | 重み w | σ | 平均 μ(経済,社会,エネ,外交,福祉,教育,分権) |
| 中道保守マジョリティ | 38% | 0.25 | 0.20, 0.20, 0.10, 0.20, 0.00, 0.10, 0.00 |
| 都市リベラル | 18% | 0.22 | -0.30, -0.50, -0.50, -0.40, 0.40, -0.30, 0.20 |
| 地方保守 | 15% | 0.22 | 0.30, 0.50, 0.30, 0.50, -0.10, 0.30, 0.40 |
| 福祉左派 | 12% | 0.20 | -0.60, -0.20, -0.30, -0.20, 0.70, 0.00, 0.00 |
| 経済右派・小さな政府 | 10% | 0.18 | 0.70, -0.10, 0.20, 0.10, -0.60, -0.20, 0.30 |
| 環境・地方分権 | 7% | 0.18 | -0.20, -0.20, -0.80, -0.10, 0.20, -0.10, 0.70 |
この6層の数字は実際の世論調査ではなく、雰囲気を出すために仮に置いたものです。
パターン②:ランダム生成(混合パラメータを毎回サンプリング)
混合ガウスのパラメータ自体をシードから乱数生成するモード。シードは擬似乱数の初期値で、同じシードなら同じ分布が再現される(決定論的)。
- 成分数 K:
3〜6 から一様サンプリング
- 各 μk:各軸を
[-1, 1] で一様サンプリング
- 各 wk:ランダムに振って総和1へ正規化
- 各 σk:
0.16〜0.28 から一様サンプリング
シードで分布が大きく変わる=結果の初期値依存。成分が接近すると混合が実質単峰に融合して1党へ収束、
十分に分離していると多党が立つ。この敏感さを観察するのがこのモードの目的。
シミュレータの「🎲 ランダム」ボタン、または「ランダム」モードでシードを入力すると再生成できる。
選挙区の作り方と「地域のかたより」(小選挙区のとき)
小選挙区では「区によって有権者が少しずつ違う」状況を作る。区の作り方は2段階。
1その区の有権者を選ぶ
上の分布から、その区の有権者を 110 人ぶん選ぶ。この時点では全部の区が同じ顔ぶれ=区ごとの個性はまだない。
2区ごとの地域シフトを加える
区ごとに7次元のシフトベクトル s ~ N(0, 0.30²·I) を1本サンプリングし、
その区の110人全員の理想点に同じ s を加算(平行移動)する。区内のクラスタ相対配置は保ったまま、区全体がランダム方向に並進する。
| 数字 | 値 | 意味 |
| 比例での有権者数 | 2,200 | 比例は全国をまとめて1つで計算 |
| 選挙区の数 | 40 | 小選挙区はこの数だけある |
| 1区の有権者数 | 110 | 各区で1位の党が1議席を取る |
| 区のかたよりの大きさ | 0.30 | 区ごとにランダムに全体をずらす量の目安 |
注意:これは現実の地域性ではない。シフト s は
(a)軸間が独立(対角共分散)なので「経済右派の区は外交もタカ派」といった軸間相関は出ず、
(b)区間も独立同分布(i.i.d.)なので「都市/地方」「東/西日本」のような空間的自己相関(地理構造)も無い。
やっているのは「区ごとに無相関な並進で異質性を入れる」ことだけで、その偏りに地理・産業・年齢といった外から与えた意味づけがない。
よって特定政党の地盤は構造的に再現できない。σ=0.30 も現実の区間格差を推定した値ではなく便宜的な仮置き。
棄権閾値 R
最寄り政党までの距離が棄権閾値 R を超える有権者は棄権する(その票はどの党にも入らない)。R を小さくするほど周縁の有権者が脱落し、分布中央寄りの党が相対的に有利になる。R が無いと中央の1党が周縁票まで吸い上げ、参入余地が消える。
3. 政党の戦略(ベストレスポンス動学)
- 近接投票:各有権者は最寄り政党に投票(棄権閾値 R を超えれば棄権)。小選挙区は各区1位のみ議席、比例は全国得票率で議席配分。
- ベストレスポンス:各党は他党の位置を所与(固定)として、自分の議席(小選挙区)/得票(比例)を最大化する位置へ移動する。これは政党を利得最大化プレイヤーとみなした非協力ゲームの最適応答。
- 逐次更新:全党同時ではなく1党ずつ順に最適応答を適用する(Gauss–Seidel 型の逐次ベストレスポンス)。全党が動かなくなれば純粋戦略ナッシュ均衡。
- 退出・参入:得票が閾値未満の党は退出、空白地帯に正の利得があれば新党が参入する。よって政党数はあらかじめ決めず、退出・参入という動きの結果として決まる(はずだが、後述の通り収束しないと確定しない)。
ベストレスポンスの実装:離散候補集合上の探索
「得票最大化点へ動く」は連続最適化(勾配法)ではなく、約12点の離散候補集合を評価し、利得最大の点を選ぶ近似として実装している。
したがって党は連続的に移動せず、候補点のいずれかへ離散的にジャンプする。
①候補集合を構成(≈12点)
・各混合成分の中心 μk(6点)/・現在位置(1点・"動かない"選択肢)/・現在位置に N(0, 0.15²) のジッターを加えた近傍4点(局所微調整)/・全有権者の加重重心(重み付き平均 Σ wi xi / Σ wi、1点)
②各候補で利得を評価
「当該党のみその候補へ移し、他党は固定」した配置で全有権者の投票を集計。小選挙区なら議席シェア、比例なら得票シェアを利得とする。
③argmax を採用
利得最大の候補を選ぶ(差 < 1e-9 の同点なら現状維持)。これを全党に逐次適用する。
非収束(リミットサイクル)の機構。
候補集合の主軸が「成分中心」という離散点なので、党は微小移動ではなく別クラスタへジャンプする(移動量 ≈ クラスタ間距離)。
空いた中心を参入が埋め戻し、また別クラスタへ跳ぶ → 退出 → 参入…と周期軌道(リミットサイクル)に陥りやすく、ナッシュ均衡へ収束しない。
近似の限界:argmax は候補集合内の最良点にすぎず、クラスタ間の大域最適点は候補に無ければ取りこぼす。本質的に「主要クラスタのいずれかに陣取る」局所近似。
2つの選挙のしくみ(小選挙区 / 比例)
| しくみ | 議席の決まり方 | 起きやすいこと |
| 小選挙区 | 各区で1位の党だけが議席を取る。2位以下はゼロ。 | 票がムダになりやすく、大きい党が有利 |
| 比例代表 | 全国の得票割合に応じて議席を分ける。 | 小さい党も生き残りやすい |
大事なのは、しくみの違いが最後の議席の数え方だけでなく、各党の動き方そのものも変えること。
票を数えるとき、小選挙区なら「区で1位を取れるか」、比例なら「得票の割合」を見るので、各党はそのしくみで自分が一番得する場所を探して動く。
注意:議席変換は現実の日本の選挙制度に合わせていない。定性モデル用に単純化しており、議席数を現実に当てる精度はない。
- 比例は単純比例配分(得票シェアをそのまま議席シェアに)。日本が用いるドント式(D'Hondt)や阻止条項(法定得票率)は未実装。
- 小選挙区の区数・区定数は便宜値(40区×110人)。現実の衆院289小選挙区とは無関係。
- 日本の小選挙区比例代表並立制や惜敗率による復活当選も未実装。
用途は「有権者分布が議席へどう効くか」の定性的傾向の観察。現実に寄せるならドント式・実定数・並立制の作り込みが必要。
4. 1回(1ラウンド)で何が起きるか
ざっくり言うと:
①自分(例: A党)が、他の党はそのままで一番票が取れる場所へ動く →
②各党が順番に同じことをやる →
③その並びで全有権者が近い党に投票して勝負 →
④票を議席に変える(このルールが小選挙区と比例でちがう)。
これを「どの党も動いても得しなくなる」まで繰り返す。
「▶再生」や「⏭1ラウンド」を押すたびに、中では次の①〜⑥が順に動く。①でやっている候補地探しの詳しい話は §3「いちばん票が取れる場所へ動く」とは具体的に何をしているか を参照。
①各党が順番に、票が増える場所へ動く
党を1つずつ取り、「他の党はそのまま」として、自分の議席/得票が一番増える候補地へ動かす。
候補地は次の中から選ぶ:
・各かたまりの中心(その層の真ん中に乗ってみる)
・今いる場所(動かない選択肢)
・今の場所のすぐ近くにランダムにずらした4か所(微調整)
・全有権者の重みつきの真ん中
それぞれの候補地で票を計算し、一番多い場所を選ぶ。このラウンドで一番大きく動いた距離を最大移動量として記録する。
②退場のチェック
議席/得票の割合が 3% に満たない党は退場させる。
全部の党が3%未満になってしまう場合は、一番大きい党だけは残す(全滅を防ぐ)。
③新規参入のチェック
党の数が上限10に達していなければ、各かたまりの中心を「新党の置き場所候補」として試す。
そこに新党を置いたときの取り分が 5% を超える(=割に合う空きがある)なら、一番おいしい1か所に新しい党が現れる。
④取り分を計算し直す
退場・参入のあとの顔ぶれで、全有権者の投票をやり直し、各党の取り分(小選挙区=議席の割合/比例=得票の割合)を確定する。
⑤数値の更新と動きの記録
一番大きい党の取り分・実質の党数・投票率を計算してグラフに1点追加。各党の今の位置を、動いたあとを示す線(尾)に書き足す(直近14ラウンド分を残す)。
⑥収束判定
最大移動量 < 0.001 かつ退出・参入ともゼロのとき収束(≈純粋戦略ナッシュ均衡)とみなして停止する。
ジャンプや出入りが続く限り未収束で、その場合の政党数はモデルの動きの中で決まった確定値ではなく、上限ラウンドでの打ち切り値にすぎない。
実際このモデルは候補集合が離散的なため、党がクラスタ間を跳び続けてリミットサイクルに入りやすい。
5. 出力指標の定義
| 指標 | 定義 |
| 最大シェア max sₖ | 最大政党の議席/得票シェア。1強度の目安。 |
| 集中度(HHI) | ハーフィンダール指数 Σ sₖ²。各党シェアの二乗和で、1党独占に近いほど1へ、均等分散ほど0へ。 |
| 実効政党数(ENP) | 1 / HHI = 1 / Σ sₖ²(Laakso–Taagepera 指数)。「実質何党で競っているか」。2なら二大政党的、大きいほど多党拮抗。 |
| 投票率 | 棄権閾値 R 内に政党があり投票した有権者の割合(1 − 棄権率)。 |
| 最大移動量 | そのラウンドの全党中の最大移動距離(L2)。0 へ漸近すれば収束、振動が続けば未収束。 |
6. モデルの限界(未実装の機構)
- 戦略投票がない。有権者は常に最寄り党へ正直投票する。小選挙区での「死票回避=当選圏の2党に乗り換える」デュヴェルジェの心理的効果が無いため、「巨大与党+少数野党乱立」は出ず多党のまま。これが1強を生む本体で、戦略投票の導入が次の拡張。
- 先行者優位(縄張り効果)がない。大票田クラスタに複数党が相乗りして票を分割する。先占による参入障壁を入れると独占=巨大与党に近づく。
- 政党アイデンティティ(非空間的効用)を無視。投票は政策距離のみで決まり、政党帰属やバレンス(valence)次元はない。
- 全パラメータが仮置き。有権者分布も政党配置も実測ではなく、定性的傾向を見るための数理モデル。
AIで作成しているため事実確認が必要です。
7. よくある質問
Q. 小選挙区と比例って何?
小選挙区=各区で1位だけが当選、2位以下は議席ゼロ。日本の衆院小選挙区やイギリス・アメリカ型。票がムダになりやすく大きい党に有利。
比例代表=得票の割合に応じて議席を分ける。小さい党も生き残りやすい。
Q. 「一番票が取れる場所へ動く」って具体的に何をしてる?
なめらかに動くのではなく、だいたい12か所の候補地(各かたまりの中心・今いる場所・近くに少しずらした4か所・全体の重みつきの真ん中)を試して、一番票が多い場所へ一気に飛び移る。だから党がかたまりからかたまりへ飛び回り、なかなか落ち着かない(§3に詳しく)。
Q. 勝つと現実通りに議席が変わる?
いいえ。比例はそのままの割合で分けているだけ(本物の配分方式ではない)、小選挙区の区の数・人数も仮の値(本物の289小選挙区とは関係ない)。本物の制度の細かい決まりも入れていない。議席数を現実通りに当てる正確さはなく、傾向を見るためのもの(§3末の注意)。
Q. 各選挙区への有権者の割り振りはランダム?地域の特性は出せる?
完全なランダムではなく、区ごとにランダムな「かたより」を足して、区に少し個性をつけている。ただしそのかたよりはバラバラの方向なので、「都市はリベラル・地方は保守」のような本物の地域の特性は出せない(§2の注意)。
Q. 何ラウンド回しても収束しない。たまに収束する。これは正常?
正常。収束しないのがむしろデフォルトで、収束はうまく噛み合った初期配置のときだけ起きる。理由は二段構え:
① 飛び石(消せる原因)=党が十数か所の候補地へ一気に飛ぶので、少しずつ動いて落ち着くことができず振動する。これは探索の作り方による見かけの揺れで、近くだけをじりじり探す方式に変えれば消える。
② Hotelling–Downs(消せない本質)=3党以上の空間競争ではそもそも純粋戦略ナッシュ均衡が一般に存在しない(古典的な結果)。①を消しても、均衡点そのものが無い配置では1点で止まらず循環する。つまり「動き続ける」が数学的に正しい状態。
収束する場合もある:各党が別々のかたまりを奪い合いなしに1つずつ占め、退出も参入も止まると、全党が「今の場所が最適」になり停止する。収束判定は「最大移動量<0.001 かつ 退出ゼロ かつ 参入ゼロ」の3条件すべてを満たしたときだけ(§4⑥)で、ラウンド数での打ち切りではなく本物の停留点。「233ラウンドで収束」のような表示が出たら、本当に均衡に着いている。
Q. 比例代表で、複数の党が同じ場所に重なったり、A党とB党が場所をそっくり入れ替えたりする。バグ?
どちらも比例代表で自然に出る現象で、バグではない。根は同じ「比例代表は位置の差別化を強制しない」こと。
① 同じ場所に重なる:比例代表には小選挙区のような勝者総取りが無く、報酬は自分の得票割合だけ。だから大きいかたまりを2党で半分こするほうが、誰もいない薄い地域へ単独で行くより得なことがある(「大きいかたまりの半分 > 小さいかたまりの総取り」)。小選挙区なら同じ場所で食い合うと第3党に区を取られるので必ず離れる力が働くが、比例代表はその罰が無いので重なりを許す。
② A党とB党が場所を交換:各党はラベル(出現順A・B…)以外は完全に同質な主体。だから2党の位置を丸ごと入れ替えても盤面全体は同じ状態(置換対称性)で、互いの「良い場所」を指して席を入れ替える解が普通に出る。これは「A→Bの場所/B→Aの場所」を2ラウンドで往復する2周期のリミットサイクルでもあり、名前だけ入れ替えてグルグルしている。移動量が0にならないので収束判定には引っかからない。
AIで作成しているため事実確認が必要です。
8. 用語解説
本文で用いた数理・政治学用語の定義。理系院生向けに標準表記のまま記す。
| 用語 | 定義 |
| 政策空間 | 政策的立場を座標で表す多次元ベクトル空間。本モデルは7次元、各軸 [−1, 1]。空間投票理論(spatial voting)の枠組み。 |
| ユークリッド距離 (L2) | 2点間の直線距離 ‖x−y‖₂ = √Σ(xₖ−yₖ)²。本モデルでの「立場の近さ」。各軸を等重みとみなす(マハラノビス的な軸重み付けはしていない)。 |
| 近接投票 (proximity voting) | 有権者が自分の理想点に最も近い候補に投票するモデル。対概念は方向投票(directional voting)。 |
| 中位投票者定理 | 1次元・単峰選好・2候補のもとで、均衡が中位有権者の理想点に一致する定理(Black/Downs)。単峰分布だと全党が中央へ収束し1党化する理由。 |
| 混合ガウス分布 (GMM) | p(x)=Σ wₖ·N(x|μₖ, Σₖ)。複数の正規成分の重み付き和。各成分=有権者クラスタ。多峰にすることで複数の局所最適(=複数政党の盆地)を作る。 |
| μ / w / σ | 各成分の平均ベクトル(理想点)/混合重み(人口比、Σwₖ=1)/標準偏差(散らばり)。本モデルは等方共分散 σ²·I を仮定。 |
| シード (seed) | 擬似乱数生成器の初期値。同一シード→同一分布が再現される(決定論的再現性)。 |
| 地域シフト | 選挙区ごとに加える並進ベクトル s~N(0, 0.30²·I)。区内の相対配置を保ったまま区全体を平行移動させ、区間異質性を作る。軸間独立・区間i.i.d.のため地理構造は持たない。 |
| i.i.d. | 独立同分布(independent and identically distributed)。各区のシフトが互いに無相関かつ同一分布。空間的自己相関がないことを意味する。 |
| 棄権閾値 R | 最寄り党までの距離が R を超えると棄権するカットオフ。alienation(疎外)による棄権のモデル化。 |
| ベストレスポンス (最適応答) | 他プレイヤーの戦略を固定したときに自分の利得を最大化する戦略。本モデルでは「他党位置を所与に得票最大化する位置」。 |
| 逐次ベストレスポンス | 全員同時更新(Jacobi型)ではなく1人ずつ順に最適応答を適用する反復(Gauss–Seidel型)。 |
| ナッシュ均衡 | どのプレイヤーも単独逸脱で利得を改善できない戦略の組。本モデルでは全党が移動で得しなくなった配置(純粋戦略均衡)。 |
| 加重重心 | 重み付き平均 Σwᵢxᵢ / Σwᵢ。全有権者の「人口で重みづけした中心」。単峰分布での最適応答点に対応。 |
| argmax | 関数を最大化する引数。ここでは候補集合のうち利得が最大の候補点を選ぶ操作。 |
| リミットサイクル | 力学系が定常点に収束せず周期軌道に落ち込む状態。離散候補によるジャンプ+参入補充で生じる非収束。 |
| ドント式 (D'Hondt) | 各党得票を1,2,3…で割った商の大きい順に議席を配る最大平均方式。日本の比例で採用。本モデルは未実装(単純比例で代用)。 |
| 並立制 | 小選挙区比例代表並立制。小選挙区と比例を独立に並べて議席を出す日本の衆院制度。本モデルは両者を別シナリオとして比較するのみで併用しない。 |
| デュヴェルジェの法則 | 小選挙区制は二大政党制へ、比例代表制は多党制へ向かうという経験則。死票回避の心理的効果+大政党優遇の機械的効果が機構。 |
| 戦略投票 | 最寄り党でなく「当選見込みのある党」に入れる投票行動。本モデル未実装で、これが無いため小選挙区でも1強化しない。 |
| HHI | ハーフィンダール・ハーシュマン指数 Σsₖ²。集中度の指標。独占で1、均等分散で小さくなる。 |
| 実効政党数 (ENP) | 1/Σsₖ²(Laakso–Taagepera)。シェアを考慮した「実質的な政党数」。 |
| バレンス (valence) | 政策位置と独立に全有権者が一様に評価する党の資質(信頼・実績など)。本モデルは未導入。 |
AIで作成しているため事実確認が必要です。